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『無人島に生きる十六人』

Kindle版(青空文庫、無料)はこちら

 

評価 ★★★☆☆ 読むだけの価値はあります


この本は、明治時代に太平洋の小さな無人島に漂着した16人の日本人船員たちが、みんなで力を合わせて危機と困難を乗り越え、無事日本への帰還を果たすまでの波乱に満ちた体験を語った実話です。

明治31年(1898年)、南方の漁業調査のために太平洋に向かった16人乗りの帆船龍睡丸は、翌年5月20日の未明、ミッドウェー島近くのパール・エンド・ハーミーズ礁で暗礁に乗り上げて遭難、小船に乗り移った16人は、小さな無人島を見つけてそこに上陸します。
ウィキペディア 「パールアンドハーミーズ環礁」

いつか助けがやってくることを信じ、それまでその島で生き抜こうと心に決めた彼らは、中川船長のリーダーシップのもと、必死で水を確保し、食べられるものを探し、みんなで無人島での生活を築き上げていきます。また、通りがかった船を絶対に見逃さないために、砂山を築いて島の標高を上げ、やぐらを建てて見張りを配置するなど、島を脱出するための布石も次々に打っていきます。

船が遭難する場面から、彼らが無人島でのサバイバル生活を確立していくあたりまでは、描写に緊迫感があふれていて、思わず話に引き込まれてしまいます。また、試行錯誤とみんなのアイデアによって手近な素材が便利な道具に化けていくところなどは、読んでいてワクワクします。

彼らが無人島でどんな生活を送ったのか、具体的に紹介したいのは山々なのですが、あまり書いてしまうと、これからこの本を読まれる方の楽しみを奪ってしまうので、その後の話の展開を含め、内容の紹介はこれくらいにしておきます。

この本は、もともと子ども向けに書かれたので、楽しく読みやすい本にするために、実際に起きた出来事をベースにしながらも、そこに多少の誇張や脚色がなされている可能性があります。また、16人もの人間がサバイバル生活をする以上、そこに多少の確執などもあったと思いますが、そうした、読者がネガティブに受け止めそうな出来事も、話の中からは注意深く排除されている気がします。

そして、そういう目で見てみると、全体的に話の展開がうますぎると感じられるところもないわけではないのですが、別の見方をすれば、読者がそんな風に感じるくらいのすごい幸運が続いたからこそ、彼らは生き延びられたということなのかもしれません。ギリギリの状況でサバイバルしていた彼らにとって、命を支える条件の一つでも欠けるようなアクシデントがあれば、彼らは生きて無人島を出ることはできなかったでしょう。

それと、この本を読んでいて感じたのは、非常事態に置かれた人間集団がどれだけ適切な対応をとれるかは、個々のメンバーの経験や能力はもちろん、やはりリーダーシップの質というものに大きく左右されるのだな、ということでした。

この本は、船長の体験談という形をとっているので、船長がメンバーに、どのようなタイミングでどのような指示を与えたか、また、細かな気遣いも含めて、彼らをどのように精神的に掌握していたかもわかりやすく描かれています。

ただ、一読者として欲をいえば、この本に登場する16人の船乗りそれぞれのキャラクターや役割があまり詳しく描き分けられていないのは、小説ではないので止むを得ないとはいえ、やや物足りない感じがしました。

また、さらに無責任なことを言わせてもらえるなら、彼らが漂着した無人島が、探検の余地もないほど小さかったのも読者としてはちょっと残念でした。でも、ひょっとして、そう感じていたのは遭難した16人も同じで、彼らが休むことなく自分たちの生活を改善し続けたのも、あるいは、探検できるような場所のない狭すぎる島で、みんなのエネルギーを鬱屈させないための必死の工夫だったのかもしれません。

それはともかく、この本のシンプルで生き生きとした文章には、冒険小説を読んでいるようなワクワク感を覚えるし、明治の頃の海の男のたくましさや心意気も伝わってきます。

なお、この本は青空文庫にも登録されていて、無料で読むこともできます。
青空文庫 『無人島に生きる十六人』


本の評価基準

 以下の基準を目安に、私の主観で判断しています。

 ★★★★★ 座右の書として、何度も読み返したい本です
 ★★★★☆ 一度は読んでおきたい、素晴らしい本です
 ★★★☆☆ 読むだけの価値はあります
 ★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください
 ★☆☆☆☆ 人によっては得るところがあるかも?
 ☆☆☆☆☆ ここでは紹介しないことにします



JUGEMテーマ:読書

 

at 19:12, 浪人, 本の旅〜世界各国

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『漂流記の魅力』

Kindle版はこちら

 

評価 ★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください


この本を読む前には、そのタイトルから、これまでに世界中で書かれた漂流記の主なものを取り上げて、その魅力を語るといった内容なのかと想像していました。

実際には、この本でいう「漂流記」とは、江戸時代の日本における、漂流民への聞き書きを意味しています。

当時の日本では、海外への渡航は禁じられていましたが、ごくわずかの船乗りたちは、乗り組んだ船が漂流して他国へ流れ着いたり、外国船に救助されたりすることで、異国の人々やその暮らしぶりを自分の目で見る機会がありました。

幸運にも日本へ帰ることができたのは、彼らのうちの、さらにごく一部だけなのですが、幕府は、帰還した人々がキリシタンでないかどうか取り調べるとともに、学者に命じて、彼らの遭難の状況や異国での見聞、送還までの経緯などを精密に記録させました。

そうした記録が、数々の漂流記として今に残されているのですが、吉村昭氏はその一例として、18世紀末に若宮丸の船乗り(水主)たちがロシアに漂着し、やがて世界を一周して日本に帰還するという波乱に満ちたエピソードを、この本の紙面の大半を割いて紹介しています。

1793年11月、江戸へ送る藩米などを積んで石巻を出帆した16人乗りの若宮丸は、12月に遭難、舵も帆柱も失った船は黒潮に流されて、翌年5月にアリューシャン列島の島に漂着します。

水主の津太夫ら15人がロシア人に保護され、やがて彼らはイルクーツクまで移送されて、そこで別の船の漂流民である日本人2名に出会います。2人は、ギリシャ正教の洗礼を受けたためにキリシタン禁制の日本に帰れず、ロシアで暮らしていました。

若宮丸の漂流民たちは、2人のように帰国を断念して洗礼を受けるかわりに日本語教師などの職を得て豊かな暮らしをしようとする者と、貧しい境遇に耐えながらあくまで帰国を望み続ける者との二派に分裂し、互いに険悪な関係になっていきます。

それから何年もの時を経て、若宮丸の一行は皇帝の命で都のペテルブルグに呼び出され、そこに到着できた10人だけが皇帝に拝謁します。帰国を希望する者は4名(津太夫、儀兵衛、左平、太十郎)にまで減っていましたが、彼らは日本との通商を求める使節レザノフの乗り込む使節船ナジェジダ号で日本に帰還できることになりました。

その後のナジェジダ号の航海や、日本到着後の彼らの運命などについては、この本を楽しまれる方のために、これ以上は触れないでおくことにします。
ウィキペディア 「津太夫」

蘭学者の大槻玄沢は、遭難から帰還までのいきさつを若宮丸の水主たちから聞き取り、その内容を『環海異聞』としてまとめたのですが、吉村氏は、こうした漂流民たちの記録は、「史実をもとにした秀れた記録文学の遺産」であり、「生と死の切実な問題を常にはらみ、広大な海洋を舞台にし、さらに異国の人との接触と驚きにみちた見聞」が盛り込まれていて、すぐれた海洋文学の内容と質を十分にそなえているとしています。

それにしても、若宮丸の人々は、思いもかけない運命の導きによって、日本人として初めて世界を一周することになったわけですが、それは想像を絶する苦難と引き換えのものでした。彼らは、当時の日本人のほとんどが知らない世界を見、貴重な経験をしたとはいえ、それは自ら望んでのものではなかったし、彼らにとって、それが幸せな体験だったかといえば微妙なところです。

また、吉村氏もこの本の中で書いているように、彼らの奇跡的な帰還の背後には、膨大な犠牲者の存在があります。

当時、暴風雨で遭難した船の多くは、そもそも漂流する以前に沈没してしまっただろうし、船が沈まなくても、長い漂流中には全員が飢えと渇きに苦しみ、弱った者は次々に死んでいきました。ごくわずかな船だけが島や海岸に漂着するのですが、それが無人島なら船乗りたちはそのまま島で死を迎える以外になく、人の住む海岸でも、異国の住民に略奪されたり、殺される可能性があります。そしてたとえ保護されることがあったとしても、ほとんどの場合、言葉も通じず、食事にも風土にもなじめない異国の地で余生を送るしかなかったのです。

そうした背景を考えると、若宮丸の一部の水主たちが、再び故郷の土を踏むことができたのは、本当に奇跡としかいいようがありません。

こうした本を読んでいると、日本に限らず、これまで世界中で数え切れないほどの船乗りたちが、危険な航海から無事に戻ることができず、自らの苦しみや無念を誰にも伝えられないまま、むなしく海に消えていったことを思わずにはいられません。

もちろん、残された彼らの家族も含めて、多くの人々の苦しみや悲しみが、もっと安全な船や航海術を求める力となって、技術を一歩ずつ前進させてきたのだろうし、また、ひと握りの幸運な漂流者がもたらした異国の情報が、言葉や文化の異なる国々を理解する上で、大きな貢献をしてきたことも確かなのですが……。


本の評価基準

 以下の基準を目安に、私の主観で判断しています。

 ★★★★★ 座右の書として、何度も読み返したい本です
 ★★★★☆ 一度は読んでおきたい、素晴らしい本です
 ★★★☆☆ 読むだけの価値はあります
 ★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください
 ★☆☆☆☆ 人によっては得るところがあるかも?
 ☆☆☆☆☆ ここでは紹介しないことにします



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at 19:19, 浪人, 本の旅〜世界各国

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『いつも旅のなか』

Kindle版はこちら

 

評価 ★★★☆☆ 読むだけの価値はあります

作家の角田光代氏は、これまで仕事を含めて数十回も海外を旅しているそうですが、個人的な旅の多くは、バックパックやデイパックを背負い、安宿に泊まったり安食堂や屋台で食事をしながら、ひとりで数週間から数カ月異国を旅する、いわゆるバックパッカー・スタイルです。

そこには、個人旅行ならではの、未知の人々との出会いがあり、思わぬハプニングがあり、ゆったりと流れる旅の時間があります。

この本には、アジアの国々をはじめ、世界各地で角田氏が体験した旅のエピソードがユーモラスに描かれているのですが、読んでいると、彼女の豊かな旅の日々が垣間見えるような気がします。

角田氏は本文中で、自分は致命的な方向音痴のうえに、何度旅を繰り返しても旅慣れるということができず、いまだに異国や旅がこわいと書いているのですが、そう言いつつも、いったん日本を飛び出せば、安食堂で地元の人に混じって地酒を飲んだり、知り合った現地の人たちと思う存分遊んだり、ときには正体不明の「合法」ドラッグでバッドトリップしてみたりと、結構やんちゃな旅も楽しんでいるようです。

また、国境というものが好きで、茶店でひがな一日茶をすすりながら、国境付近を行き来する人を眺めていたりするなど、なかなかディープな旅の楽しみを知っている方とお見受けしました。

彼女は旅に関しては「超ダウナー系」なのだそうで、行き先の国や街についてあまり予備知識を詰め込まず、着いた先では自分のペースでゆったりと過ごしながら、そこで誰か面白い人物と出会うのを待つなど、基本的には受け身の姿勢で旅をしているのですが、その代わり、五感や思考、さらには勘にいたるまで、自らの感受性はフルに働かせているようです。

この本に描かれている旅のルートや内容は、実は、決して冒険的でも、めずらしいものでもありません。ある程度個人でいろいろな国を旅した人なら、実際に足を運んだことのありそうな地名がいくつも並んでいます。

それでも、角田氏のエッセイがとても味わい深く、その描写にハッとさせられるようなオリジナリティを感じるのは、旅先で出会う風景や人々や、ちょっとしたハプニングや印象深いできごとのなかに、彼女の人柄や生き方の姿勢みたいなものが、率直に、的確なことばで表現されているからなのでしょう。

そこには、きれいなものも汚いものも、楽しいことも苦い経験も、この世界が差し出してくれるすべてのものを見て、味わってみたいという好奇心や、それらをこの世の現実として肯定し、受け入れようという姿勢、そして、旅先で出会うすべての人々への温かいまなざしが感じられます。

また、ゆったりとした旅の時間は、人をおのずと思索に誘うものですが、このエッセイでも、旅のスタイルと年齢の問題とか、旅立ちの不安、自分のお気に入りの国、あるいは旅の展開の仕方が象徴する自分の人生のパターンなど、さまざまな興味深いテーマに触れています。

こういうテーマは、旅の好きな人なら特に面白く感じるはずです。彼女のことばに共感できる旅人も多いだろうし、あるいは逆に、旅に関して自分とは少し違う視点や考え方に、新鮮さを覚える人もいるのではないでしょうか。


本の評価基準

 以下の基準を目安に、私の主観で判断しています。

 ★★★★★ 座右の書として、何度も読み返したい本です
 ★★★★☆ 一度は読んでおきたい、素晴らしい本です
 ★★★☆☆ 読むだけの価値はあります
 ★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください
 ★☆☆☆☆ 人によっては得るところがあるかも?
 ☆☆☆☆☆ ここでは紹介しないことにします



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at 18:39, 浪人, 本の旅〜世界各国

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