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『道の先まで行ってやれ! ― 自転車で、飲んで笑って、涙する旅』

 

 

評価 ★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください

この本は、自転車による世界一周旅行記『行かずに死ねるか!』の著者、石田ゆうすけ氏の最新作です。

彼は、世界一周を終えてから数年もの間、自転車の旅をしていなかったそうなのですが、雑誌に旅行記を連載する仕事が決まったのを機に、チャリダー(自転車で旅する人)としての旅を再開しました。

この本に収められた旅は、いずれも数日間と短いのですが、沖縄の離島から北海道まで、彼の興味の赴くまま、日本各地を自由に旅するバラエティ豊かなもので、ロマンティストで、うまい食事ときれいなお姉さんには目がない彼が、笑いあり涙ありの、ユニークで中身の濃い旅を展開しています。

数年のブランクのせいもあるのか、冒頭の数回の旅は、何となく様子見というか、慣らし運転をしているようなところがあって、石田氏の関心の向けどころにしても、旅の展開にしても、ちょっとありきたりな印象を受けてしまうのですが、旅を重ねるうちに、やがて彼は熟練した旅人の感覚をしっかり取り戻したようで、後半ではその本領を発揮し、彼らしい、生き生きとした旅を見せてくれます。

それにしても、彼は、旅先でちょっと目に留まった変わった店や、地元の人とのふとした会話など、ささやかなきっかけをとらえて、それを面白い体験に発展させていくのが本当にうまいと思います。

こういうのは、ただ当てずっぽうにやってもうまくいかないことが多いのですが、彼の場合は、豊富な旅の経験に照らし合わせながら、旅で鍛えた直感や、内面の微妙な感情に素直に従うことで、おいしい展開になりそうな芽を、逃さずにつかまえることができるのでしょう。

そしてそれは、結局のところ、石田氏が、この世界のいたるところにポジティブなものを見出し、面白がることのできる才能があるということなのだと思います。

この本を読んでいると、自分のペースで旅を組み立てられ、あちこち自在に動き回れて、地元の人とも心理的に近づくことのできる自転車旅行の面白さがしっかりと伝わってきます。

誰もが石田氏のように旅することはできないのでしょうが、私もいつか、自転車で自由な旅をしてみたいという気持ちになりました。


石田ゆうすけ著 『行かずに死ねるか! ― 世界9万5000km自転車ひとり旅』 の紹介記事


本の評価基準

 以下の基準を目安に、私の主観で判断しています。

 ★★★★★ 座右の書として、何度も読み返したい本です
 ★★★★☆ 一度は読んでおきたい、素晴らしい本です
 ★★★☆☆ 読むだけの価値はあります
 ★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください
 ★☆☆☆☆ 人によっては得るところがあるかも?
 ☆☆☆☆☆ ここでは紹介しないことにします



JUGEMテーマ:読書

 

at 18:27, 浪人, 本の旅〜日本

comments(0), trackbacks(0)

『浦島太郎はどこへ行ったのか』

評価 ★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください

日本人なら、たぶん知らない者のないほど有名な浦島太郎の物語。しかしこの昔話が、実は、かつて日本の歴史書の中に描かれた「史実」であったということは、ほとんど知られていないのではないでしょうか。

『日本書紀』には、丹後国の浦嶋子が雄略天皇の治世22年(西暦478年)に蓬莱山を訪れたという記述があり、『丹後国風土記』の逸文には、浦嶋子と蓬莱の亀姫との悲恋が語られています。その後、中世の『御伽草子』に描かれた浦島太郎の話によって、亀の恩返し、龍宮、乙姫、玉手箱など、現代まで伝わっているようなモチーフが広まったとされています。
ウィキペディア 「浦島太郎」

もしも浦島太郎の話が単なる空想物語ではなく、その一部にせよ、何か歴史的な事実が反映されているのだとしたら、この不思議な話をどのようにとらえればいいのでしょうか? 彼の前に現れた亀とは? 龍宮はどこにあったのか? 玉手箱の中身とは? 等々……。

この本の著者、高橋大輔氏は、そうした謎の正体を突き止めるべく、浦嶋伝説の舞台であった丹後半島をふりだしに、他に伝説の伝わる土地や、謎を解く手がかりになりそうな場所を片っ端から訪れ、果ては「蓬莱」の痕跡を求めて、中国にまで足を伸ばします。

浦島太郎の物語の謎に惹かれる人は多いでしょうが、実際にそこまで徹底的な探索をする人はまずいないでしょう。「子供が考えつくようなことを、大の大人が大真面目でやる」ところに、この本の面白さがあります。

高橋氏は各地への旅を繰り返し、同時に古代史に関わる膨大な文献の山と格闘し、現場で得たインスピレーションと文献の記述とをつき合わせていくのですが、そのプロセスを通じて、有史以前のはるか昔から日本と周囲の世界を結びつけてきた海上のルートの存在と、そこからもたらされたさまざまな技術や文化、そして、それを担ってきた古代の海人族と浦嶋伝説との深い結びつきが浮かび上がってきます。

そして彼は、旅の最後に、浦嶋子が実在の人物であったことを前提に、彼が実際にたどり着いた「蓬莱」とはどこであったのかなど、浦嶋伝説をめぐる謎についての大胆な仮説を提示しています。

もちろん、この仮説を古代史の専門家がどう評価するのかは私には分からないし、その仮説に説得力を感じるかどうかも、それぞれの読者次第でしょう。それにそもそも、龍宮や玉手箱の正体が分かったところで、一体それが何の得になるのか? と言われてしまえばそれまでです。

しかし私はむしろ、こうした結論部分よりも、そこにいたるまでの試行錯誤、つまり、わずかな手がかりを求めて文献を渉猟し、日本の各地を飛び回るというプロセスこそ、探求者にとって最も価値のある、楽しい時間だったのだと思います。

高橋氏はこの本の旅を、「物語を旅する」こと、つまり「伝説や神話、昔話、あるいは物語に秘められた謎を追い、フィクションとノン・フィクションが重なり合う接点を求める旅」であるとしていますが、こうした探索の旅というのは、ツボにはまれば非常に面白そうです。

ただし、今回のように古代史が関わってくると、虚実入り乱れた膨大な文献の混沌とした世界に足を踏み入れることになるので、下手をするとそこから一生出られなくなりそうですが……。


本の評価基準

 以下の基準を目安に、私の主観で判断しています。

 ★★★★★ 座右の書として、何度も読み返したい本です
 ★★★★☆ 一度は読んでおきたい、素晴らしい本です
 ★★★☆☆ 読むだけの価値はあります
 ★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください
 ★☆☆☆☆ 人によっては得るところがあるかも?
 ☆☆☆☆☆ ここでは紹介しないことにします


JUGEMテーマ:読書 

at 18:54, 浪人, 本の旅〜日本

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『日本浄土』

評価 ★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください

この本は、写真家の藤原新也氏が日本各地を旅し、島原、天草、尾道、能登など、日本の地方の現在を写真とともに伝える紀行エッセイです。

あとがきで彼自身が「これまで行って来た数多くの旅の中でもっとも目立たない地味な旅」と書いているように、旅のエピソードや、それを描く藤原氏の筆致、そして本書に収められた写真にも、取り立てて目をひくような派手さはありません。

それでも、五島うどんを食うためだけに五島列島まで出かけたり、天草ではママチャリで旅することを思い立ち、中古のママチャリの買い物カゴに、なぜかまねき猫の置き物を入れて走ったりと、地味ながら随所に藤原氏らしさがにじみ出ていて楽しめます。

また、この本に収められた小さな旅の多くが、彼の人生に何らかの結びつきのある場所をたどる旅です。旅先の風景を幼少の頃の思い出と重ね合わせたり、あるいは今は亡き親しい人々を追憶するような旅は、時の無常を感じさせずにはいませんが、一方でそれは、過去と現在が静かに交錯する、味わい深い旅でもあります。

ちなみに、この本の中には、明治生まれの藤原氏の父が、駆け落ちの最中に野犬の群れと立ち回りを演じたという話が出てきます。私はそれを読んで、藤原氏がガンジス河の中洲で野犬の群れと対峙したエピソード(『黄泉の犬』参照)を思い出し、やっぱり親子だな……と思いました。


本の評価基準

 以下の基準を目安に、私の主観で判断しています。

 ★★★★★ 座右の書として、何度も読み返したい本です
 ★★★★☆ 一度は読んでおきたい、素晴らしい本です
 ★★★☆☆ 読むだけの価値はあります
 ★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください
 ★☆☆☆☆ 人によっては得るところがあるかも?
 ☆☆☆☆☆ ここでは紹介しないことにします


JUGEMテーマ:読書

at 18:48, 浪人, 本の旅〜日本

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