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旅の名言 「この旅の計画が無茶だと……」

 二万キロ近い距離を運転し、同伴者なしの単独行であらゆる状況の道を行くのはきつい仕事だと分かっていた。しかし私にとって、それこそが病気を生業にしてしまうことへの解毒剤だった。我が人生において、長生きのために生の手ごたえを差し出すつもりはない。この旅の計画が無茶だと分かったなら、その時にこそ旅立つべきだろう。


『チャーリーとの旅』 ジョン スタインベック ポプラ社 より
この本の紹介記事

ノーベル賞作家ジョン・スタインベック氏のアメリカ一周旅行記、『チャーリーとの旅』からの一節です。

彼が愛犬のチャーリーを連れて、キャンピングカーでアメリカを一周しようと決意したのは、60歳も近くなったときでした。

彼は58歳のときに「寄る年波からくる症状」に襲われ、自らの老いを深く実感してはいたのですが、身の周りの同じ年代の男たちが「安楽に身をひたし、衝動を押し殺し、情熱を覆い隠し、次第に男であることを捨てて精神的にも肉体的にも半病人と化していく」のを見て、あえて自分はリスクのある旅に挑戦することを選んだのです。

ただし、スタインベック氏は根っからの風来坊で、若いころから旅を繰り返し、旅そのものには慣れていたし、また、老いへの挑戦だけが旅に出た理由ではありませんでしたが……。

それにしても、「旅の計画が無茶だと分かったなら、その時にこそ旅立つべきだろう」なんていう表現は、たしかに男くさくてカッコよく聞こえますが、これは、半分は本気だとしても、残りの半分くらいは自らを奮い立たせるための強がりだったと思うし、彼もそれを十分承知した上で、こんな風に啖呵を切ってみせたのではないでしょうか。

私はまだ、当時の彼ほど年齢を重ねていないので、老いというものが具体的に実感できないし、自分が将来同じ状況になったとき、果たして彼のような挑戦ができるかどうかも分かりませんが、「長生きのために生の手ごたえを差し出すつもりはない」という彼の言葉には、年齢にかかわりなく心に響くものがあります。

安心・安全を追求し、長生きと安逸を目標に生きるなら、危険やトラブルと背中合わせの旅なんていう酔狂は止めるにこしたことはありませんが、そういう無茶を通じてしか手に入らない「生の手ごたえ」というものも、たしかに存在します。

もちろん、すべての人がそうした手ごたえを切実に必要とするわけではないでしょうが、そこに自分の生きている証しを感じるという人は、たとえ身体に衰えを感じても、むしろだからこそ、残された時間と競い合うようにして、旅に出たいという強い衝動に駆られるのかもしれません。


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at 18:54, 浪人, 旅の名言〜旅の予感・旅立ち

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旅の名言 「その日が迫るにつれ……」

 長いこと計画しているうちに、旅など実現しないような気がしてきた。その日が迫るにつれ、温かなベッドや快適な家はいよいよ好ましく、愛する妻は言いようもなく尊く思えてきた。三カ月もそれらを捨て、快適ならざる未知の脅威を選ぶなんて狂気の沙汰に思えた。
 行きたくなかった。出発できなくなるような事件が起きてほしかったが、何も起きはしなかった。もちろん病気になる手もあったが、そもそも病気こそが旅に出る最大にして秘密の理由の一つだった。

『チャーリーとの旅』 ジョン スタインベック ポプラ社 より
この本の紹介記事

ノーベル賞作家のスタインベック氏が、キャンピングカーで愛犬と一緒にアメリカを一周した旅の記録、『チャーリーとの旅』からの一節です。

彼はこの本の中で、自分は幼いころから放浪病という「不治の病」を抱えていたと白状しているのですが、そんな根っからの風来坊の彼でさえ、大きな旅への出発を目前にすると、慣れ親しんだ日常としばし決別することに激しい抵抗を覚えるようです。

心は旅へと激しく駆り立てられているのに、心のどこかでは快適で平穏な日常への強い愛着も感じている……。そんな旅人の揺れ動く心境を、スタインベック氏はユーモラスに、的確に描いているように思います。

そしてたぶん、旅立ちの前には誰もが似たような葛藤に襲われるのではないでしょうか。

もちろん、その葛藤の程度は、旅人の性格や置かれた状況によって違うはずで、例えば、毎日の暮らしに快適さどころか不満ばかり感じている人なら、そこから旅立ってしまいたいと思う気持ちを引き留めるものなどないのかもしれませんが……。

そう考えると、スタインベック氏が旅立ちの前に強い葛藤を感じていたというのは、彼の家庭での日々がとても充実していたということなのでしょう。

ところで、旅には、未知の土地や人々との出会いによって「非日常」を体験するという一面がありますが、一方で、すっかり慣れ親しんで退屈さえ感じるような毎日の生活から、これまでにない新鮮な印象を受けるのもまた非日常の体験です。

旅立ちを本気で決意し、その準備を始めただけで、「温かなベッドや快適な家はいよいよ好ましく、愛する妻は言いようもなく尊く思えて」くるというのは、まだ旅に出ていないのに、日常がすでに非日常と化してしまっているわけで、とても面白いことだと思います。

旅というプロセスは、旅人が実際に家を出る前から、すでに始まっているのです……。


JUGEMテーマ:旅行

at 19:02, 浪人, 旅の名言〜旅の予感・旅立ち

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旅の名言 「放浪の旅に対する意気ごみを……」

 皮肉なことではあるけれど、放浪の旅に対する意気ごみを測るリトマステストは、旅の中にではなく、旅を実現させるための自由を得ようとする過程にある。


『旅に出ろ! ― ヴァガボンディング・ガイド 』 ロルフ・ポッツ ヴィレッジブックス より
この本の紹介記事

放浪の旅(ヴァガボンディング)へのガイドブック、『旅に出ろ!』からの一節です。

長い旅をしたことのある人ならお分かりだと思いますが、旅を長く続けることそれ自体には、別にそれほどの困難は感じないことが多いし、特別なテクニックが必要なわけでもありません。
旅の名言 「一年くらい旅を……」

私自身の体験からいっても、たぶん旅の中で一番の試練と感じるのは、旅の始めと終わり、つまり、旅に出るという決意を実現させるまでのプロセスと、一度始めてしまった旅をどうやって終わらせるかというタイミングの問題だと思います。

旅の終わりの問題は、沢木耕太郎氏のベストセラー『深夜特急』でも大きなテーマになっているし、それについては別の機会に触れたことがあるので、今回は、旅立ちのプロセスについて考えてみたいと思います。
旅の名言 「やがてこの旅にも……」

放浪の旅への憧れは、その強度を別にすれば、たぶんどんな人の心にも芽生えることがあるはずです。

それは、ふとした思いつきのまま、自然に消えていってしまうことがほとんどでしょうが、人によってはそれが頭にこびりついて離れず、その手の本を読んだり、旅人の話を聞いたりして、どんどん旅への憧れを膨らませてしまうようなこともあるかもしれません。

しかし、学業や仕事を中断したり、あるいは身の周りの全てを清算した上で長い旅に出るという人は、実際のところほとんどいないのではないでしょうか。現実に長期にわたって世界を放浪している人の数は非常に限られているという事実が、放浪への憧れと現実との間の落差の大きさを物語っているように思います。

とはいえ、旅に出るという物理的な行動だけをとってみれば、それは別に難しいことではありません。数カ月、あるいは数年にもわたるような長い旅に出る人も、その表面的な行動だけを見れば、海外出張のビジネスマンや休暇を楽しむ観光客と全く同じで、航空券の手配をし、出国手続きをし、飛行機に乗り込んで海を渡るだけです。

大変なのは、出発に至るまでの間に、今まで続けてきた生活のすべてを見直し、放浪の旅という、これまでとは全く違うスタイルの生活を始めるための準備を着々と進めなければならないということなのです。

例えば、長い旅を夢見るだけでなく、それを実行するには、現実問題としてある程度の資金が必要になります。もし手許にそれだけの金がないなら、自らの手で稼ぎ出すしかありません。働いても金の残らない生活をしているのなら、出費を切り詰めて少しずつ貯金していかなければならないし、学生ならアルバイトで金を稼ぐ必要があります。

放浪というとロマンチックな響きがありますが、実際にそれを実現するためには、ある程度現実的になり、目標に向かって計画的にプロジェクトを進めていくような態度も必要になるのです。

そして、いざ旅の資金が用意でき、旅立つ決意が固まったとしても、次なる試練が待っています。

数カ月以上日本を離れるつもりならば、当然会社は辞めざるを得ないし、学校なら休学するか退学しなければならないでしょう。もちろん、一度会社や学校を辞めてしまったら、その後何があったとしても、すべてを元に戻してやり直せるほど世の中は甘くありません。

また、自分の周囲の人々にも、長い旅に出ることを告げる必要があるでしょう。一緒に旅に出るのでもなければ、付き合っている恋人とは別れることになるかもしれないし、すでに家庭をもっている人なら、さらに大きく複雑な問題に直面することになります。

それに、旅の間、これまで住んでいた部屋をそのままキープしておくのかといった問題や、役所や公共サービスへの各種届け出など、細々とした現実的な問題も、きちんと解決しておく必要があります。

それだけのことを実行していく過程では、当然周囲からの心配や反対もあるだろうし、自分自身の中でも、これから始まる旅やその後の人生について、ほとんど恐怖に近いような不安が心をよぎるはずです。

当然、こうした不安や数々の現実問題のことを想像しただけで嫌になり、自分にはとても無理だと、放浪の旅を早々に断念してしまう人もいるだろうし、旅に出る決意まではしたものの、準備の途中で障害を乗り越えられず、結局出発に至らない人も多いのではないでしょうか。

そういう意味で、長い旅に出るということは、さまざまな障害を一つひとつクリアーし、周囲をそれなりに説得し、自分自身の心の葛藤をくぐり抜けた上での旅立ちであり、実際のところ、出発にこぎつけるまでの段階で、すでに自らの生き方を変えるという大仕事を成し遂げていることになるのです。

『旅に出ろ!』の著者、ロルフ・ポッツ氏は、そんな奮闘のプロセスを「旅を実現させるための自由を得ようとする過程」であると美しく表現していますが、これは人によっては人生を賭けた血みどろの闘いそのものになってしまうかもしれません……。

旅に出る前に、こうした形で何度もその人の意気込みが試され、その試練を乗り越えた人だけが、実際に長い旅を始めることができるのです。言ってみれば、それは放浪への一次試験みたいなもので、あいまいな気持ちの人、準備の足りない人は、出発前の段階でふるい落とされてしまうというわけです。

もちろん、これは理屈の上の話です。

実際には、こうした厳しい「一次試験」を全ての旅人がくぐり抜けるわけではなく、特に20代前半くらいまでの若い人なら、あまり悩んだり考えたりせずに、わずかな金と勢いだけで旅に出てしまう人もけっこういるのでしょう。

それでもやはり、一般的に考えるなら、旅の出発までのプロセスは、旅の最初にして、ある意味では最大の難関だと言うことができるのではないでしょうか。


旅の名言 「いつかいつかと……」
旅の名言 「動き出せば……」


JUGEMテーマ:旅行

at 18:40, 浪人, 旅の名言〜旅の予感・旅立ち

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