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旅の名言 「そこでなんか僕の頭のチャンネルが……」

 そこでなんか僕の頭のチャンネルが変わったんですね。ていうのは貴重品は命だと言われていたわけでしょう。それさえあれば生きていけるというものがないわけですよ。取られたら死ぬと思っていたわけだけど、死んでないんですよ。当たり前ですよね、パスポートも金も航空券も人間が生きていくうえで必要じゃないから。食べ物とかそういうのは必要だけど。生命活動を維持するのにはそれら貴重品は必要じゃないわけですよ。だからなくなっても死なないし、そうやって助けてくれる人もいる。そのときに「意外と生きていけるんだな」って思ったんですよね。

『放っておいても明日は来る』 高野秀行 本の雑誌社 より
この本の紹介記事

辺境作家の高野秀行氏が、東南アジアでユニークな人生を切り開いた人々と語り合うトーク集、『放っておいても明日は来る』からの一節です。

この本の最後で、高野氏が作家になるまでのさまざまなエピソードが語られているのですが、その中に、彼が学生時代に初めてのインドで遭遇した衝撃的な体験があります。

インドを一カ月ほど旅して、そろそろ帰国という頃、彼はカルカッタで部屋をシェアした人物に騙され、パスポートなどの貴重品を含めた荷物すべてを盗まれて一文無しになってしまいました。加えて、犯人とグルだと思われるホテルの従業員に監禁されそうになったため、彼は必死でそこを逃げ出します。

彼は、たまたま知り合いになっていたインドの小学生に助けを求めました。その少年の家族は、一家が暮らす三畳ほどのアパートに泊めてくれた上、貧しいにもかかわらず、高野氏にとても親切にしてくれました。

その後、彼はなんとかトラブルを克服して帰国まで漕ぎつけるですが、そうした一連の体験が、彼の「頭のチャンネル」を切り替えてしまうことになったのです。

旅行者なら誰でも、現金やパスポートを命のように大事にします。旅行中、万が一にもそれらをなくしたり奪われたりすることのないよう、貴重品袋に入れてみたり、カバンの底に隠してみたりと、涙ぐましいさまざまな努力をするはずです。

それもこれも、理由は簡単で、勝手も分からぬ異国の地で、それらの大事な品々を失うことにでもなったら、その後どんなひどいことになるか、見当もつかないと思うからです。

しかし、旅行者のごく一部とはいえ、その「万が一」が、実際にその身に起きてしまう人がいます。

高野氏もその一人でした。そして、その最悪の事態に見舞われたとき、彼は意外なことに気がついたのでした。

「取られたら死ぬと思っていた」ほどのものを奪われたにもかかわらず、それでも自分は無事に生きているばかりか、周りの人の思いがけない親切や自分自身の機転のおかげで、事態は少しずつ前向きな方向に動き始めるのです。

彼は、自らの体験を通じて、たとえ重大なトラブルに巻き込まれても、人間、「意外と生きていけるんだな」と思うようになりました。そして、結局のところ、パスポートや現金などというものは、人間の生命活動そのもののレベルとは別の、人間同士の約束事の世界に属するものに過ぎないのだということを、実感をもって認識してしまったのでした。

一時的にせよ、無一文で異国に放り出されるというのは非常にショッキングな体験ですが、それによって高野氏は、この世界で生きていくことに対して、突き抜けた認識を得たのではないでしょうか。

私の場合は、そういう経験をしたことがないので、このあたりはただ頭の中で想像することしかできないのですが、それは、自分が立っている地面がいきなり崩れたと思ったら、実はその下にも世界が広がっていて、そこから今までの世界を見上げてみたら、全く違った風景が見えてきたという感じなのかもしれません。

そしてそれは、実際にトラブルを克服して何とか帰国できたという結果以上に、彼の「頭のチャンネル」をガラリと切り替え、生き方を大きく変えるような意味とインパクトがあったのではないかと思います。

ただし、言うまでもないことかもしれませんが、旅先での大きなトラブルは、常にそうした深い体験を旅人にもたらしてくれるとは限りません。

高野氏の場合は、インドで無一文になったことが、世界と自分に対する新しい認識のきっかけをもたらしてくれましたが、似たような体験をしても、人によってはそれはまさに究極の恐怖体験であり、人間不信への引き金であり、二度と思い出したくない、大きな心の傷になるだけで終わるかもしれません。

私も、旅先での思いがけないトラブルが、何かの拍子に旅人の「頭のチャンネル」を切り替え、その世界観や人生観をポジティブに変えていくということは十分にあり得ると思っているのですが、だからといって、あえて自分もインドで一文無しになってみようとはさすがに思いません……。


JUGEMテーマ:旅行 

at 19:39, 浪人, 旅の名言〜危機と直感

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旅の名言 「旅先でちょっとしたトラブルに……」

 旅先でちょっとしたトラブルに巻き込まれるなどしたとき、その国の人々が歓迎のキスをしてくれたのだと思うことにしている。トラブルはマイナス面ばかりではなくその旅を活性化する場合もあるからだ。のっぺりとした日常が続いたときなど活を入れるという意味で、逆にちょっと危ない橋を渡ってみるということもある。
 たとえば韓国釜山の郊外に観光客を騙すことでその名を馳せている飲食街に一人で繰り出し、ひとつマナイタの鯉となってみるか、との趣向を凝らしたあの日も、在韓三週間を過ぎ、なにも起こらない日常の中で旅が精気を失いつつあると自覚しはじめた時期のことだった。

『ショットガンと女』 藤原 新也 集英社インターナショナル より
この本の紹介記事

インド旅行記の名作『印度放浪』をはじめ、さまざまな話題作で知られる写真家の藤原新也氏の旅のエッセイ集、『ショットガンと女』からの名言です。

旅先でトラブルに巻き込まれても、それを異国の人々からの「歓迎のキス」だと受け止めてしまえるあたり、ちょっと常人には及びもつかない感覚です。

旅をしていると、日常生活とは違って、予想もしなかったようなトラブルに遭遇することが多々あります。

それは、自分のミスや無知からくることもあれば、旅先の人々とのコミュニケーション・ギャップが原因になることもあるでしょう。もちろん、あちこちを移動したり、慣れない食べ物を口にしたり、解放感や高揚感など、ふだんと違う精神状態になることによって、さまざまなリスクが高まるのもトラブルの要因になるでしょう。

それに加えて、言葉も習慣もわからない海外を、しかも個人旅行のスタイルで旅するような場合、旅先でトラブルに遭う可能性はさらに高まります。

まあ、旅のトラブルというのは、被害がそれほどでもなければ、後日、それを旅の武勇伝として、他の人に笑って語ることもできるのですが、その一方で、深刻な事故や犯罪に巻き込まれる可能性も皆無ではありません。万が一そんな状況に陥れば、さすがに笑い話では済まなくなります。

当然、ほとんどの人は旅先でトラブルになど遭いたくないと思っているはずだし、だからこそ多くの人は、問題なく快適に旅をするためのサービスにカネを惜しまないのです。

そして逆に、たとえ一人で異国に置き去りにされても、問題なく快適に旅を続けられるような人、つまり、トラブルに遭遇しても、それをどうやって最小限の被害で切り抜けるか、その方法を熟知し、確実に実行できるような人間を、ふつう、旅の達人とか、老練な旅人と呼ぶのでしょう。

しかし、旅人の中には、トラブルをあえて求めるような人間もいるようです。

先ほどの藤原新也氏など、トラブルは異国の人々からの「歓迎のキス」なのだとうそぶいていますが、ここまで大胆に言い切れるのは、やはり豊富な旅の経験からくる余裕と、ひとりでも状況を乗り切れる自信、そして旅の本質に関する深い洞察があってのことだと思います。

そのうえ彼は、自分の旅を活性化させるために、ときには「危ない橋」さえ渡ってみるのだと言います。もっとも、そこまでいくと、人々から「歓迎のキス」をもらうというより、強引にキスを奪いにいくという感じがしなくもありませんが……。

言うまでもないことですが、私はヘタレなので、旅先でわざわざ「マナイタの鯉」になりに行く勇気などありません。というより、それ以前の問題として、何かトラブルに巻き込まれたとき、それを人々からの「歓迎のキス」だとうそぶいてみせる心の余裕もありません。

もっとも、いつの日か、もう少し旅人として経験を積んだとき、誰か旅の初心者をつかまえて、そんなことをカッコよく語ってみたいという気が全くないわけではありませんが……。

ちなみに藤原氏は、釜山郊外のそのいわくつきの飲食街に出かけ、その中の一軒で食事をして予想通りトラブルに巻き込まれ、店の主人に恫喝されます。そして藤原氏は、その場のヒラメキで危機的な状況をまんまと切り抜け、「のっぺりとした日常」だった彼の旅には、めでたく旅の精気がよみがえるという展開になるのですが、それがどんな武勇伝だったかは、ぜひ本文でお楽しみください……。

それと、蛇足ではありますが、こういう旅はもちろん藤原氏だからできることで、ふつうの旅人が軽々しくマネできるものではないし、私もオススメしません。

トラブルは、旅を活性化させることもありますが、そうならない場合も多々あります。下手をすれば、人生そのもののゲームオーバーを迎えることにもなりかねません。旅人の皆様は、どうぞ十分に気をつけてください。

とはいえ、旅先で不本意にも何らかのトラブルに巻き込まれ、そのあまりの惨めさに心が落ち込んでしまうようなときは、そしてその傷が、とりあえず致命的なものではなさそうなときには、あえて視点を変えて、藤原氏のように、その国の人々が自分に熱烈な「歓迎のキス」をしてくれたのだと考えてみるのも悪くないかもしれません……。


JUGEMテーマ:旅行

at 19:02, 浪人, 旅の名言〜危機と直感

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旅の名言 「人を疑うことで……」

 私の周りでも、彼らの笑顔と親切を真に受けて被害に遭った人は多い。したがってインドを旅するとき、「人を見たら泥棒と思え」という諺を意識しないわけにはいかなかった。笑顔を疑い、親切を辞退することによって私は被害に遭わずにすんだが、そのかわりリスクも大きかった。人を疑うことで自分が傷ついたのである。
 私は、貧しい人たちから手間賃さえ出ない値段で物を買おうとして周囲のインド人に諌められたことがあったし、心からの親切を下心のある行為にちがいないと疑って相手を邪慳に扱ったこともあった。あとで事実を知って自己嫌悪に陥ったこともあった。それらは私の悪意だけで生み出されたものであり、したがって鉛を飲んだように重苦しい慚愧の思いが澱のように残ったが、そのような体験をとおして私は、インドには高潔な人々が日本よりもたくさんおり、清らかな人生を求める文化が今なお息づいていることを知ったのである。

『21世紀のインド人 ― カーストvs世界経済』 山田 和 平凡社 より
この本の紹介記事

インドという異文化と付き合っていくことの難しさを、歯に衣着せず正面から描いた、山田和氏の著作からの一節です。

この本には、海千山千のインド商人と取引するビジネスマンや、インドで暮らす外国人駐在員、そして山田氏自身が旅先で体験した、仰天するようなエピソードが満載されていますが、それらは私たちが気軽にカルチャー・ショックと呼ぶようなレベルを超えています。

インドを旅したことがあり、インド的世界にはそれなりに慣れているつもりの私でも、この本を読んだときには何度もため息が出ました。人によっては、この本を読み進めるうちに、インドでのビジネスはおろか、旅することすら恐ろしくなってしまうかもしれません。

ただ、山田氏は決してインドを貶めるためにこの本を書いたのではありません。これまで何十年にもわたってインドと付き合ってきて、インドを心から愛する山田氏が、後に続くであろう多くの日本人に向けて、無用な誤解や苦労を少しでも減らすことができるよう、親切で得がたいアドバイスをしてくれているのだととらえるべきなのでしょう。

また、この本に書かれている内容は、仕事でインドと関わるビジネスマンだけでなく、インドを旅する人にとっても有益だと思います。

ただ、インドについて、そのネガティブな側面や、「不良インド人」の行動パターンをあらかじめ知っておくことは、旅人の危機管理上、非常に役立つことは間違いないのですが、一方で、そうした知識が頭の中にあると、インド人に対して始めから身構えてしまいがちになるし、実際に旅先で似たような事例に遭遇すれば、なおさら警戒心を強めてしまうのも確かです。

もっとも、これはインドに限った話ではなく、自分にとって見知らぬ土地を旅するときには、多かれ少なかれあてはまることなのでしょうが……。

安全に旅をすることは、旅人として何よりも優先されるべきポイントですが、その一方で、必要以上に警戒しすぎれば、思いがけない出会いや、旅の面白い展開から自分を遠ざけてしまうことにもなります。旅の無事ばかりを考えて、24時間危機管理に専念していたのでは、何のために旅をするのか分からなくなってしまいます。

旅人がどこまで自分をオープンにし、どこまで慎重になるか、そのちょうどいいバランスは、山田氏のように何度も傷つき、苦い経験をしながら、少しずつ体得していくしかないような気がします。現実問題として、すべての人を信じることなどできないし、信じて被害に遭うリスクの大きさを考えれば、見知らぬ人の笑顔と親切が、心からの親切なのか、それとも下心なのか、自信をもって判断できないときには、それを敬遠するしかないからです。

しかし、そういう判断力を磨いていく経験は、なかなか日本ではできないことだし、そうした判断力をしっかり培うことで、初めて見えてくる世界もあるのだろうと思います。そう思えば、インドのような混沌とした異世界に飛び込んで行くことにも、それなりの意味があるのではないでしょうか。

でもまあ、インドと長い付き合いを続けられるかどうかは、結局のところ、理屈を超えた好き嫌いの問題なのでしょう。インドの「何か」にとり憑かれてしまった旅人は、周りが何と言おうと、どんなにインドに苦労させられようと、嬉々としてインドに通いつめるものです……。


JUGEMテーマ:旅行 

at 18:42, 浪人, 旅の名言〜危機と直感

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