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『セルフビルド ― 家をつくる自由』

評価 ★★★☆☆ 読むだけの価値はあります

自分の住む家を、自分の手で建てることができたら……。

日本各地に、そんな夢を実現した人たちがいます。「家をつくる自由」がテーマのこの本には、そうしたセルフビルド、またはハーフビルドの住宅が30例近く、豊富なカラー写真で紹介されています。

この本を出している「旅行人」は、バックパッカー向けの旅行雑誌や旅に関する本を扱っている出版社で、著者も編者も、みな世界各地を旅したことのある人たちです。

長い旅の経験を通じて培われたまなざしが、日本での住まいや暮らしに向けられるとき、これまでとは違った、もっと自由でのびのびとした生き方を模索するようになるのは、当然の成り行きなのかもしれません。

しかし、持ち家といえば建売の一戸建てかマンションを想像してしまう多くの人々にとって、自分の家を自分でつくるという行為への心理的なハードルはかなり高いのではないでしょうか。

それでも、この本に紹介された数多くの具体的な事例を見ていくことで、実際のところ、セルフビルドはそれほど難しくはなく、むしろ楽しい作業なのかもしれないと思ったり、あるいは、すぐに自分もやってみようとまでは思わないにしても、少なくとも家づくりについての常識を見直すきっかけになるかもしれません。

この本を読むと、初心者にはなじみのない、建築関係の用語や道具の名称がたくさん出てきますが、そうした用語や、家づくり関係の法律については、巻末に用語集や解説がつけ加えられるなど、細やかな気配りもされています。

ただ、この本に載っている事例をまとめて見ていくと、そこには一定の傾向のようなものがあることも確かです。

田舎の広い敷地に大きな家、広いリビングに吹き抜け、薪ストーブというパターンが多いし、紹介されているビルダーも、陶芸家など、アーティスト系の人が多いようです。

これは、取材先の家やビルダーがたまたまそうだったのか、それとも一般的な傾向なのかどうかは分かりません。もちろん、会社勤めのかたわら、週末に現場に通い、何年もかけてコツコツと家を建てたという事例もいくつかあるので、自由業でなければセルフビルドができないというわけではありません。

しかし、法律の問題もあって、都会の狭い敷地に自由に家を建てるのはむずかしいし、田舎に家を建てるとなれば、家づくりだけでなく、仕事をどうするかという問題も出てきます。やはり田舎でそれなりに暮らしていけて、時間も比較的自由になる仕事でないと、セルフビルドは難しいのかな、という印象を受けるのも確かです。

それから、セルフビルドとは思えないほど本格的で、細部まで目の行き届いた家を建てているケースが多いという感じもしました。こういうこだわりは日本人の特性なのかもしれません。

ただ、個人的には、細部に多少の難はあっても、奇抜なアイデアに基づいた独創的な家づくりをしている事例をもっと見てみたかった気がします。

例えば、南伊豆の平太氏のバンブーハウスなど、身近で手に入る素材を利用し、少々(かなり?)ワイルドで自由につくられた感じは、私のイメージするセルフビルドの感覚にピッタリでした。

もっとも、見ていてワクワクする家かどうかということと、それが暮らしやすい家かどうかということは、全く別の問題なんだろうと思いますが……。


本の評価基準

 以下の基準を目安に、私の主観で判断しています。

 ★★★★★ 座右の書として、何度も読み返したい本です
 ★★★★☆ 一度は読んでおきたい、素晴らしい本です
 ★★★☆☆ 読むだけの価値はあります
 ★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください
 ★☆☆☆☆ 人によっては得るところがあるかも?
 ☆☆☆☆☆ ここでは紹介しないことにします



JUGEMテーマ:読書

at 18:35, 浪人, 本の旅〜住まい

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『世界の不思議な家を訪ねて ― 土の家、石の家、草木の家、水の家』

Kindle版はこちら

 

評価 ★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください

この本は、世界各地の人々の暮らしを長年にわたって撮り続けている写真家の小松義夫氏が、旅先で出会った不思議で面白い家々を、カラー写真と文章で紹介するものです。

そのほとんどは、その地に暮らす人々が自らの手で作り上げてきた伝統的な家屋です。身の周りで手に入る素材を活かし、可能な限りの暮らしやすさを追求していくなかで、それは独自の発展を遂げ、どの家も他では見られないユニークさと機能美にあふれています。

私個人としては、シバームの「泥の摩天楼」(イエメン)、チチカカ湖の浮島の家(ペルー)が特に印象に残りました。また、これは伝統的な住居ではありませんが、一攫千金を夢見てオパール鉱山にやってきた人々が、自宅兼坑道として地下を好きなように掘削して住んでいる、クーパーピディの地下住居(オーストラリア)もユニークでした。

こうした美しい住居が今も残っているのは、大都市からは遠く離れた辺境であることが多く、したがって撮影のためにはかなりハードな旅を強いられることになります。

この本には、小松氏が取材中に遭遇した困難や、危機的な状況なども簡潔に描かれているのですが、意外なのは、「危険地帯では夫婦のほうが安全」という判断から、渡航延期勧告が出ているような地域に夫人を伴って出かけていくという発想です。

もちろん、これは長年にわたる旅の経験と可能な限りの情報収集・準備をふまえた上での判断で、誰もがマネのできるようなことではないのですが……。


本の評価基準

 以下の基準を目安に、私の主観で判断しています。

 ★★★★★ 座右の書として、何度も読み返したい本です
 ★★★★☆ 一度は読んでおきたい、素晴らしい本です
 ★★★☆☆ 読むだけの価値はあります
 ★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください
 ★☆☆☆☆ 人によっては得るところがあるかも?
 ☆☆☆☆☆ ここでは紹介しないことにします

 

 

 

JUGEMテーマ:読書

 

 

 

at 18:28, 浪人, 本の旅〜住まい

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『ターミナルマン』

サー・アルフレッド・メヘラン,アンドリュー・ドンキン

評価 ★★★☆☆ 読むだけの価値はあります

外国旅行中にパスポートを失ったために、空港の入管で自分の身分を証明できなくなり、どこの国からも受け入れを拒否されて、仕方なく空港の待合室に住み着くことになった男……。

2004年に公開されたスピルバーグ監督の映画『ターミナル』は、そんな奇想天外な境遇に陥った男の物語を描いていますが、この話のネタ元になったという人物が実在します。

本書は、イラン生まれのメヘラン・カリミ・ナッセリー、通称アルフレッド・メヘラン氏の自叙伝です。彼は1988年、パリから飛行機でロンドンに渡ろうとしたところ、身分証明書を所持していないためにパリへ強制送還されたのですが、身分証明書がないためフランスに入国することも、第三国に向かうこともできなくなりました。

彼はシャルル・ド・ゴール空港に足止めされ、そのまま18年近くもの間、第1ターミナルの赤いベンチに座って、そこから出発できる日を待ち続けました。

一体どうしてそんなことになってしまったのでしょう? 

アルフレッド・メヘラン氏は、パスポートを再発行してもらい、出身国のイランに帰れないのか? 彼は空港の待合室から出ないまま、所持金もないのにどうやって今まで食いつないできたのか? それにそもそも、身分証明書をもっていないという理由で入国を拒否されたまま、他に何の選択肢も与えられず、十数年も放置されるなどということが現代のヨーロッパであり得るのか? 

この人物の存在を知ったら、どんな人でも、次から次へと疑問が湧いてくるはずです。本書では、彼がド・ゴール空港で足止めされ、動けなくなった複雑な事情が、タマネギの皮を剥くように少しずつ明らかにされていきます。そして、それはやがて彼の出生の秘密にまで及んでいきます……。

実際の文章は作家のアンドリュー・ドンキン氏が執筆していて、本のミステリアスな展開自体は面白いのですが、読み終わって、アルフレッド・メヘラン氏の人生について詳しく知ってしまうと、何か納得できないような、モヤモヤとした後味が残ります。

それは、彼の人生が、まるで得体の知れない不条理さに包まれているように感じるからかもしれません。

彼の人生は(まだすべてが終わったわけではありませんが)、あらゆる国から拒否され続ける人生であり、国籍という問題に一生つきまとわれる人生です。この地球上で合法的に暮らせる場所を誰からも与えてもらえず、空港の待合室という、入管と入管の間のエアポケットにはまり込んだまま、ただひたすら救出を待ち続ける日々。

しかし、物事は一向に解決せず、人々は彼の側を急ぎ足で通り過ぎていくだけです。そしていつしか、彼はその孤独で宙ぶらりんの状態が自分の運命であると受け入れたかのように、ド・ゴール空港第1ターミナルの赤いベンチを自分の家と思い定め、毎日毎日その同じベンチに座り続けるのです。

どこの国の人間でもなくなり、定職もなく、同じ建物の中を行ったり来たりするだけの日々。はた目には普通の外国人旅行者のようにしか見えないし、自分の足でどこにでも歩いていけるはずなのに、国籍という見えない壁があるために、そこから出ることができないのです。彼にとっての全世界とは、ド・ゴール空港第1ターミナルの建物の中だけになってしまったのです。

私には、その何ともいえない「不条理感」を、どうにもうまくお伝えできないのですが、この本を実際に読んでいただければ、その奇妙な感じを分かっていただけると思います。

なお、アルフレッド・メヘラン氏については、ウィキペディアの項目「マーハン・カリミ・ナセリ」でもその略歴等を知ることができます。

現在彼はどうしているのか調べてみたら、ウィキペディアの英文の項目「Mehran Karimi Nasseri」に、アルフレッド・メヘラン氏は2006年に病気で入院し、既にド・ゴール空港第1ターミナルを退去したとありました。


本の評価基準

 以下の基準を目安に、私の主観で判断しています。

 ★★★★★ 座右の書として、何度も読み返したい本です
 ★★★★☆ 一度は読んでおきたい、素晴らしい本です
 ★★★☆☆ 読むだけの価値はあります
 ★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください
 ★☆☆☆☆ 人によっては得るところがあるかも?
 ☆☆☆☆☆ ここでは紹介しないことにします

at 13:45, 浪人, 本の旅〜住まい

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