このブログ内を検索
新しい記事
記事のカテゴリー
            
過去の記事
プロフィール
            
コメント
トラックバック
sponsored links
その他
無料ブログ作成サービス JUGEM

『ホームワーク』

評価 ★★★★☆ 一度は読んでおきたい、素晴らしい本です

この本は、「自分の手で自分の家をつくる」というテーマに沿って、アメリカ各地や世界中に建てられた手づくりの家を、膨大な写真と資料で紹介するユニークな写真集です。

本書は、以前にこのブログで紹介した『シェルター』の続編ともいえるものです。著者のロイド・カーン氏は、これまで自ら取材・撮影してきた建物のほか、『シェルター』の読者から寄せられた資料も示しながら、「住む」という、人間にとって根源的な行為の様々な側面と可能性を見せてくれます。

 家づくりを学ぶことと平行して、わたしはいろいろな建物の写真を撮ってきた。旅に出るときには必ずカメラとノートをもち、小さな建物を記録して歩いた。するとわたしが吸い寄せられるのは、いつでも決まって自分で家を建てる人たちがいるところだった。わたしが探し、わたしの目が引きつけられたものとは何であったのか? それは手づくりの建物で、以下の特徴をひとつでも備えているものである。

・ 優れた技術が発揮されている
・ 実用的で、シンプルで、費用をかけず、役に立っている
・ 資源を有効に使っている
・ 周囲のランドスケープになじんでいる
・ 美的感興にあふれ、いい雰囲気を発散している
・ 設計と施工が破綻なく組み合わされている
・ (さらには、あるいは) 型破りな創造力を発揮している


こうした条件に合う手づくりの家は、大規模なマンションやニュータウンの建売住宅の中には見出せないものです。もちろん、自分で住む家を自分で建てるという「生き方」はアメリカでも少数派で、カーン氏の立場も1960年代以降のカウンター・カルチャーの流れを色濃く反映しているのですが、そうした背景を抜きにして、個性あふれる小さな家々の写真を眺めているだけでもインスピレーションが掻き立てられ、自分でも何か造ってみたいという気持ちが湧いてきます。

この本には、自由な発想による家づくりの可能性がたくさん詰め込まれています。ホーム・ビルダーたちのユニークな生き方、様々な天然素材(泥とワラの家、土嚢積みの家、竹の家など)へのこだわり、世界各地のエスニックな家屋、アーティストによる破天荒な家(ガラス瓶の家、軽量コンクリートによる自由な造形、ツリーハウスなど)、移動する家(ジプシーワゴン、ハウストラックなど)等々、常識を超える実例が次から次へと出てきて、眩暈がするほどです。

もちろん、それらの試みは完成形ではないし、快適さや安楽さの犠牲の上に成り立っている部分もあります。それでも、勇気をもって一歩踏み出し、実践を始めた人々の事例を眺めていると、「こんな風にしてもいいんだ」「これでも生きていけるんだ」という驚きとともに、家というものは何十年も働いて得た金でようやく手に入るものだという常識から、少しずつ解き放たれていくような気がします。

高価な本ですが、「自分で住む家を自分で建てる自由を生きる」というテーマに興味のある人はもちろん、普通の住まいに飽き足らないものを感じている人なら一度は目を通してみる価値があると思います。

ロイド・カーン著『シェルター』の紹介記事


本の評価基準

 以下の基準を目安に、私の主観で判断しています。

 ★★★★★ 座右の書として、何度も読み返したい本です
 ★★★★☆ 一度は読んでおきたい、素晴らしい本です
 ★★★☆☆ 読むだけの価値はあります
 ★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください
 ★☆☆☆☆ 人によっては得るところがあるかも?
 ☆☆☆☆☆ ここでは紹介しないことにします

at 19:32, 浪人, 本の旅〜住まい

comments(0), trackbacks(0)

『シェルター』

シェルター
シェルター
玉井 一匡,ロイド カーン

評価 ★★★☆☆ 読むだけの価値はあります

本書のタイトルであるシェルターという言葉は、日本では、核シェルターや防空壕、あるいは貧困者などを一時的に保護する施設のような、「避難所」という意味合いで使われていますが、英語にはそうした意味に加えて、「衣食住」のことを food, clothing, and shelter ともいうように、人間が生きる基本である「住」、雨風から身を守るための「すみか」や「家」という意味もあるそうです。

この本は、人間が実際に住むための「シンプルな家」という観点から、古今東西のあらゆる形態の住居を取り上げており、多数の写真とイラスト、様々な人物による短い文章が、まるでスクラップブックのように散りばめられています。

カッパドキアの洞窟住居、ベドウィンのテントや中央アジアのユルト、アメリカ先住民のアースロッジ、様々な様式の木造住居、ツリーハウス、現代の前衛的な住居やハウスカー、未来的なドームハウスなど、世界中の住居の実例が挙げられる一方で、それぞれの素材や工法、道具などについても簡単に紹介されています。

 シンプルな家、自然の中に見つかる材料、人間の創意工夫の才、自らの目と身体による発見や重労働、自給自足の楽しみ、そして自由。それが本書のテーマだ。しかし主役はもちろんシェルター。シェルターは単なる雨よけや、風よけには留まらぬ、人類の歴史と深く関わる存在なのだ。


ページをめくっていると、とにかくワクワクしてきます。日本では、家といえば、新聞の折り込みチラシに載っているような、一戸建てやマンションなどの建売住宅のイメージがすっかり定着していますが、世界を見渡せば、現代でも驚くほど多彩な住居の形と暮らし方があるのです。そして、あえて時流に逆らい、個性的な住まいを求めて果敢にチャレンジしている人たちもいることを知り、自分も何かやってみたくなるのです。

「住む」ということの原点に戻り、身近で手に入れられる材料と、知恵と手仕事と勇気によって、自分たちのオリジナルでシンプルな家を建てることの喜びが、この本を通じて伝わってきます。

ただ、この本は「住む」ことの基本に関して、広く浅くあらゆる話題を網羅しているので、経験者や建築関係者にとっては新たな発想へのヒントになると思いますが、ある程度具体的な経験を積んでいない人にとっては、この本だけでは、すぐに実用的な役には立たないかもしれません。この本はむしろ、溢れんばかりに詰め込まれたアイデアの数々や、「世界中を旅した気分で“夢”を見させてくれる」ことに最大の効用があるのだと思います。

ちなみに、この本はとても大きいので、収納や取り扱いにやや困ると思います。また、原書は1973年の出版で、既に30年以上が経過しています。その間に試みられたであろう様々な挑戦や実験についても、アップデートされた形で知りたいと思いました。

ロイド・カーン著『ホームワーク』の紹介記事


本の評価基準

 以下の基準を目安に、私の主観で判断しています。

 ★★★★★ 座右の書として、何度も読み返したい本です
 ★★★★☆ 一度は読んでおきたい、素晴らしい本です
 ★★★☆☆ 読むだけの価値はあります
 ★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください
 ★☆☆☆☆ 人によっては得るところがあるかも?
 ☆☆☆☆☆ ここでは紹介しないことにします



at 21:51, 浪人, 本の旅〜住まい

comments(0), trackbacks(0)

『船で暮らす地中海』

船で暮らす地中海
船で暮らす地中海
足立 倫行

評価 ★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください

退職後の第二の人生として、船を購入して地中海で暮らすというユニークな夢を実現させた日本人夫婦。モーター・クルーザーによる彼らの旅にノンフィクション作家の足立倫行氏が同行し、取材を通じて彼らの人生の歩みを振り返りながら、こうしたユニークな夢を選ぶに到った背景と、その夢を支える周囲の人々についてまとめたのが本書です。

この本では、クルーザーによる地中海の旅そのものよりも、「彼らはなぜ、こういう生き方を選択するに到ったのか?」「家族や友人・知人はどうとらえているのか、どのようなサポートをしているのか?」といった、一見優雅に見える生活を成り立たせている、舞台裏への関心が中心となっています。

私個人としては、船を所有することや、ヨーロッパで暮らすこと自体には、それほど関心があるわけではないし、老後のことを考えるのもちょっと早すぎるのですが、足立氏のノンフィクションはどれも面白いので、読んでみることにしたのです。

本書の「主人公」である稲次哲郎氏は、大手商社の重役まで務めた人物で、誰もが真似できるわけではない、人生の成功者といえると思います。しかし、いわゆる大富豪や芸能人ではなく、商社マンとして堅実に仕事を続けてきた人物が、退職後いきなり船のオーナーになって海外で暮らす、というのは、日本ではかなり意外なことなのではないでしょうか。

読み進めていくと、稲次夫妻がこのような生き方を選んだ背景が浮かび上がってきます。そして同時に、長い海外生活による語学力など、現在の海外生活を直接支えている能力の他にも、彼らが長い人生の中で経験してきたこと、築いてきた人間関係が、いろいろな形で新しい生き方を支えていることが分かります。

彼らは、今までの仕事や人生の経験を通じて、いったん決意したことは、どんなアイデアでもすみやかに実現させられるだけの知恵と能力を磨いてきました。「地中海を自分の船でクルージングする」という全く未知の分野でさえ、自分たちがその気になれば、免許を取得し、勉強をし、友人の助けも借りながら、確実に実現させることができるのです。

そういう意味では、稲次夫妻は、今まで人や組織のために働くことを通じて身につけてきた能力を、今度は自分たちのために存分に活用し、マイペースで楽しんで生きるという喜びを、今しみじみと味わっているのではないかと思います。

こういう事例を読んでいると、この本の主旨からは外れるかもしれませんが、どんな人間でも、将来どんな生活を送ることになるのかは、それまでの人生で積み重ねてきたことの直接の結果だということを痛感します。現在の自分が将来への「種まき」をしているという、厳然たる事実を忘れないようにしようと改めて思いました。


本の評価基準

 以下の基準を目安に、私の主観で判断しています。

 ★★★★★ 座右の書として、何度も読み返したい本です
 ★★★★☆ 一度は読んでおきたい、素晴らしい本です
 ★★★☆☆ 読むだけの価値はあります
 ★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください
 ★☆☆☆☆ 人によっては得るところがあるかも?
 ☆☆☆☆☆ ここでは紹介しないことにします


at 20:11, 浪人, 本の旅〜住まい

comments(0), trackbacks(0)